こんにちは。「やたキャリア」を運営している、元人事部長の「やた」です。
私が新卒で入社した会社はCROでした。
そこで入社から10年程、DM(データマネジメント)や統計解析部門の実務を経験しました。
その後、CROを転職し事業企画や営業の仕事を経て、事業がわかる人事部門に再編すると言う会社のミッションにより、人事部門へ異動しています。
企業での仕事の進め方について、CROで色々と学ぶことができました。
当時は、日々新しい発見があり、今となってはとてもいい思い出になっています。
さて、CROのDMについて調べていると、
「DMって何をする仕事?」
「看護師や薬剤師の経験は活かせる?」
「未経験でも転職できる?」
といった疑問が出てくるのではないでしょうか。
結論から言うと、DMは治験で集められたデータを整理・確認し、解析に使える信頼性の高いデータへ仕上げる仕事です。
未経験者を募集している求人もありますが、「医療知識があるから大丈夫」というだけでは、選考で苦戦することもあります。
この記事では、
DMの実務を経験した側と、
その後、人事として採用に関わった側
の両方の視点から、仕事内容や未経験転職について解説します。
CROのDMとは?治験データの品質を守る仕事
DMは「Data Management(データマネジメント)」の略です。
CROのDMでは、治験で集められたデータについて、
- 正しく集められているか
- 矛盾や不足がないか
- 解析に使える状態になっているか
を確認し、整えていきます。
日本CRO協会でも、DMは試験データの収集からデータセット化までの過程で、その信頼性を確保する業務として位置づけられています。
【日本CRO協会の公式ページへのリンクはこちらです】
DMというと「データ入力の仕事」をイメージする方もいるかもしれません。
しかし実際には、単にデータを入力する仕事ではありません。
治験データは、最終的に医薬品の有効性や安全性を評価する材料になります。
そのためDMは、治験データの品質を守る仕事と考えると分かりやすいでしょう。
CROのDMの主な仕事内容
DMの仕事は、治験の進行に合わせていくつかの工程に分かれます。
データ収集方法を設計する
治験が始まる前に、
「どのようなデータを集めるのか」
「どのような形式で入力するのか」
「どんな場合にエラーとして確認するのか」
などを決めます。
現在の治験では、EDC(Electronic Data Capture)と呼ばれる電子的なシステムを使ってデータを収集することが一般的です。
DMは治験実施計画書などを確認しながら、
- 必要なデータ項目
- 入力ルール
- エラーチェック
- データ確認の方法
などを検討します。
また、プロジェクトによっては、データ管理をどのように進めるかをまとめたデータマネジメント計画書(DMP)を作成します。
入力されたデータを確認し、クエリを出す
医療機関から入力されたデータについて、
- 未入力がないか
- 数値に矛盾がないか
- 検査値として不自然ではないか
- 他の項目と整合しているか
などを確認します。
確認が必要な点があれば、「クエリ」と呼ばれる問い合わせを通じて医療機関側に確認します。
DMでは、単に数字だけを見るわけではありません。
例えば、
「この検査日は投薬前なのか後なのか」
「この有害事象の発現時期と薬剤投与の時系列は合っているのか」
といったように、複数の情報をつなげながら確認する場面があります。
データクリーニングを行う
治験データには、
- 入力漏れ
- 矛盾
- 表記ゆれ
- 不自然な数値
などが発生することがあります。
それらを一つずつ確認し、解析できる状態へ整えていくのがデータクリーニングです。
DMの仕事の中でも、非常に重要な工程です。
コーディングを行う
治験では、疾患名や有害事象、併用薬などの表現を統一する必要があります。
例えば、
「頭痛」
「頭が痛い」
「headache」
のように表現が異なっていても、解析では統一された形で扱わなければなりません。
そのため、有害事象や疾患名にはMedDRA、薬剤名にはWHODrugなどの標準辞書を使用してコード化することがあります。
実際の担当範囲は、企業やプロジェクトによって異なります。
安全性情報との整合性を確認する
プロジェクトによっては、安全性部門が管理している重篤な有害事象(SAE)の情報と、治験データに登録されている内容に食い違いがないか確認することもあります。
新薬の安全性評価に関わるため、正確さが求められる作業です。
データベースを固定する
必要な確認や修正がすべて完了したら、データベースを固定します。
これを「DBロック」と呼びます。
DBロック後、そのデータが統計解析担当者へ渡されます。
つまりDMは、治験データを集める仕組みを作るところから、解析へ渡す直前まで深く関わる仕事です。
薬剤師・看護師・臨床検査技師の経験はDMでどう活かせる?
医療職からDMへの転職を考えている方にとって、「これまでの経験が役に立つのか」は大きな関心事だと思います。
結論として、臨床経験を活かせる場面はあります。
ただし、医療知識があるだけでDMの仕事ができるわけではありません。
薬剤師
薬剤師であれば、
- 薬剤名
- 用量・用法
- 副作用
- 疾患
- 併用薬
などの知識があります。
特に有害事象や併用薬に関するデータを見る場面では、薬に関する知識が業務理解の助けになります。
看護師
看護師であれば、
- 患者さんの状態
- 病歴
- 検査値
- 医療現場の流れ
- 医師や他職種との連携
などについて実務経験があります。
治験データを確認するとき、「この経過は少し不自然では?」と気づけることがあります。
臨床検査技師
臨床検査技師は、
- 検査値
- 基準値
- 検査方法
- 異常値
について専門的な知識があります。
DMではさまざまな検査データを扱うため、こうした経験は強みになる可能性があります。
ただし、医療現場とCROでは仕事の進め方が大きく異なります。
臨床知識を持っていることに加えて、その知識をデータの確認や品質管理にどう活かせるかまで考えることが重要です。
未経験からDMを目指す場合に求められるスキル
「DMだから、統計が得意でないと難しいのでは?」と思う方もいるかもしれません。
DMと統計解析は別の職種なので、統計解析担当者と同じレベルの高度な統計知識が必須というわけではありません。
一方で、次のような力は重要です。
正確に確認する力
DMでは大量のデータを扱います。
小さな矛盾や入力ミスを見逃さない注意力が必要です。
「だいたい合っているから大丈夫」では済まない仕事です。
論理的に考える力
検査日、投与日、有害事象の発現時期など、複数の情報を関連づけて確認する場面があります。
単純に画面上の数字を見るだけではなく、前後関係を考えながら確認する力が求められます。
コミュニケーション力
DMは一人でデータだけを見続ける仕事ではありません。
- CRA
- 統計解析担当者
- システム担当者
- 製薬会社
など、多くの関係者と連携します。
確認したい内容を整理して、相手に分かりやすく伝える力も必要です。
PCやシステムへの抵抗がないこと
EDCやデータベース、Excelなどを日常的に使用します。
プログラミングが必須ではない求人も多いですが、企業や担当業務によってはSASなどのツールに触れる場合もあります。
必要なスキルは求人票で確認してください。
基本的な英語力
グローバル試験では、英語の資料やメールを見る機会があります。
必ずしも高度な英会話能力が求められるわけではありませんが、英文資料を読むことへの抵抗が少ないことは役立ちます。
元DM経験者として感じた、DMの仕事の大変さ
DMは専門性のある仕事ですが、決して華やかな仕事ばかりではありません。
私自身もDM・統計解析部門で仕事をしていましたが、最初はかなり苦労しました。
私は理系出身ではあったものの、薬剤師や看護師のような臨床経験はありませんでした。
そのため、薬剤名、疾患名、検査値、医療用語、治験特有のルールなど、分からない言葉が次々に出てきました。
一つずつ調べながら仕事を覚えていったことを今でも覚えています。
CROの仕事は全て手順が定められており、それに従って淡々と作業を進めていくことなります。
同じような症例の確認が続くと、どうしても気が緩みます。
「前に見た症例でも同じような有害事象があった」
「投薬内容も特に代わり映えもないので、担当医に確認しなくても問題ないだろう」
そんな慢心から、有害事象を見落とすというミスを犯してしまいました。
幸い、その時は先輩社員がチェック漏れを指摘してくれたため、大事には至りませんでした。
でも、もしそのまま見過ごしていたらと思うと今でも冷や汗が出ます。
DMの難しさの一つは、細かな確認を正確に積み重ね続けなければならないことです。
何千、何万というデータの中から矛盾を見つける。
関係者に確認する。
修正されたデータをもう一度確認する。
DBロックなどの締め切りが近づけば、作業が集中することもあります。
そのため、「医療現場を離れれば楽になりそう」というイメージだけで転職すると、思っていた仕事とのギャップを感じる可能性があります。
一方で、自分が整えたデータが新薬の有効性や安全性を評価する材料になる。
そこには、DMならではの責任とやりがいがあります。
元人事部長としてDM未経験者の採用で見ていたポイント
DMの仕事を経験した後、私は人事側で採用に関わるようになりました。
未経験でDMを目指す方を見るとき、「医療知識があります」だけで採用を判断していたわけではありません。
それよりも、自分の経験をDMの仕事でどう活かせるのかを、自分の言葉で説明できるかを見ていました。
評価につながりやすい人
例えば、
- 臨床経験を「データの品質」に結びつけて説明できる
- 正確さや確認作業について具体的な経験を話せる
- 記録・報告・チェック業務の経験をDMの仕事と関連づけられる
- なぜ臨床ではなくDMなのかを説明できる
といった方です。
選考で苦戦しやすい人
反対に、
- 志望理由が「臨床がつらいので離れたい」だけ
- 「医療知識があります」とだけ強調する
- DMの仕事内容を十分理解していない
- DMとCRAの違いが説明できない
といったケースでは、採用側として少し不安を感じることがあります。
臨床がつらいと感じること自体が問題なのではありません。
転職にはさまざまな理由があります。
ただ、採用する側が知りたいのは、
「なぜ次の仕事としてDMを選ぶのか」
です。
「データを通して新薬開発を支えたい」という言葉を覚える必要はありません。
むしろ、「なぜ臨床ではなくDMなのか」を、自分の経験とDMの仕事内容をつなげて説明できることの方が重要です。
DM・CRA・統計解析の違い
CROへの転職を調べていると、DM、CRA、統計解析の違いが分かりにくいことがあります。
大まかに整理すると、次のようになります。
| 職種 | 主な役割 |
|---|---|
| CRA | 医療機関を担当し、治験がルールどおり実施されているか確認する |
| DM | 治験データを確認・整理し、品質を確保する |
| 統計解析 | DMが整えたデータを統計的に解析し、有効性・安全性を評価する |
簡単に言えば、CRAが治験現場を支え、DMがデータを整え、統計解析がそのデータを分析するという関係です。
ただし、実際のプロジェクトではそれぞれが独立して仕事をするわけではありません。
互いに情報を共有しながら、一つの治験を進めていきます。
DMのキャリアパスと働き方
DMとして経験を積んだ後には、さまざまなキャリアがあります。
例えば、
- DMの専門性を高める
- DMリーダーになる
- マネジメントへ進む
- プロジェクト全体を管理する仕事へ広げる
- 統計解析やデータ関連領域へ専門性を広げる
といった道があります。
実際のキャリアパスは企業によって異なります。
また、DMはPCを使う時間が長い仕事なので、臨床現場とは働き方も大きく変わります。
CROのDMの仕事は、プロジェクトの立ち上げ時やDBロック前など特定の時期に作業が集中し、結構忙しい状況となります。
一方で、運用が安定してくる上記以外の時期では、割と安定しており、日々の生活の予定も組みやすいのではないかと思います。
特に、CROの大手はフレックスタイム制度やリモートワークの導入が進んでいるので、働き方の自由度は他のサービス業と比べると割と高いと思われます。
DMの仕事は今後どう変わる?
DMの仕事も変化しています。
DCT(分散型臨床試験)、eCOA、ウェアラブルデバイス、AIなどの普及によって、治験で扱うデータの種類や量は増えています。
今後は、単に収集されたデータを確認するだけではなく、
- どのようにデータを集めるのか
- どう品質を確保するのか
- どの段階でリスクを管理するのか
といった、治験のより早い段階からDMが関与する重要性も高まっています。
(様々な取り組みについては「日本製薬工業協会」のHPを参照してみて下さい)
そのためDMは今後、「集まったデータを処理する人」だけではなく、「治験全体のデータ品質を考える人」という役割がより重要になっていくでしょう。
未経験からDMを目指すなら、最初にやること
DMへ転職したいと思ったら、いきなり応募先を探す前に、まず自分の経験とDMの仕事内容をつなげてみてください。
1.これまでの経験を棚卸しする
医療職であれば、
- 確認した経験
- 記録した経験
- 異常に気づいた経験
- 他職種へ報告した経験
- ミスを防ぐために工夫した経験
などを書き出します。
DMでは、こうした経験が活かせる可能性があります。
2.「なぜDMなのか」を整理する
「臨床を離れたい」
という気持ちがあったとしても、それだけでは志望動機として十分とはいえません。
その先にある、
「なぜCRAではなくDMなのか」
「自分の経験のどこがDMで活かせそうなのか」
まで考えてみてください。
3.複数の求人票を比較する
同じ「DM」という職種でも、企業によって仕事内容や応募条件は違います。
特に未経験求人では、
- 医療職経験
- 治験関連経験
- 英語
- PCスキル
- データ処理経験
など、企業によって重視するポイントが異なります。
そのため、一つの求人だけを見るのではなく、複数の求人票を比較してみることをおすすめします。
転職エージェントを利用している場合は、
「未経験者を採用した実績があるか」
「その企業が未経験者に何を求めているのか」
を担当者に確認する方法もあります。
4.面接で聞かれることを準備する
医療職からCROへ転職する場合、
- なぜ臨床を離れるのか
- なぜCROなのか
- なぜDMなのか
は、面接で整理しておきたいポイントです。
答えを暗記するのではなく、自分の経験 → 転職理由 → DMを選ぶ理由 が一つにつながるように整理しておくと、話しやすくなります。
CROのDMについてよくある質問
DMは未経験でも転職できますか?
未経験者を対象とした求人はあります。
ただし、すべての企業・求人が未経験者を募集しているわけではありません。
医療職経験、治験関連業務の経験、英語力、PCスキルなどが評価される場合があります。
求人ごとの応募条件を確認してください。
DMになるために資格は必要ですか?
DMになるための必須国家資格があるわけではありません。
ただし、薬剤師、看護師、臨床検査技師などの医療知識は、業務を理解するうえで役立つことがあります。
DMとCRAならどちらが医療職に向いていますか?
どちらが良いというものではありません。
医療機関や多くの関係者と直接やり取りする仕事が好きならCRA。
データを細かく確認し、整理・品質管理する仕事が好きならDM。
といった違いがあります。
自分がどのような働き方をしたいのかで考えるとよいでしょう。
DMには統計の知識が必要ですか?
統計解析担当者と同じレベルの専門知識が必須というわけではありません。
ただし、後工程でデータがどのように解析されるのかを理解するため、基本的な統計の考え方を知っていると業務理解に役立ちます。
まとめ|DMは医療知識を「データの品質」に活かす仕事
CROのDMは、治験で集められたデータを確認・整理し、解析に使える信頼性の高いデータへ仕上げる仕事です。
薬剤師、看護師、臨床検査技師などが持っている、
- 疾患の知識
- 薬の知識
- 検査値への理解
- 医療現場への理解
は、DMでも活かせる可能性があります。
ただし、「医療知識があるからDMに向いている」というほど単純でもありません。
患者さんと直接接する時間は減り、PCでデータを確認する時間が増えます。
細かな確認を積み重ねる正確さや、さまざまな関係者と調整する力も必要です。
だからこそ、
「自分の医療経験を活かせるか」だけでなく、「データを通して新薬開発を支える働き方が自分に合っているか」
まで考えてみてください。
私自身、最初は知らない医学用語や治験独特の考え方に戸惑いました。
それでも仕事を続けていくうちに、DMは単なるデータ処理ではなく、
治験の信頼性を支える仕事
なのだと感じるようになりました。
未経験からDMを目指すのであれば、「なぜDMなのか」を借り物の言葉ではなく、自分自身の経験から説明できるようにしておくことをおすすめします。
次のキャリアステップに興味を持った方は、是非、この記事で取り上げたポイントを参考にして、新たな道を切り開いてください。
最後に私がおすすめする転職サイト、転職エージェントまとめた記事のご紹介です!
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まだ、気になるエージェントが見つかっていない方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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